NHKスペシャル 最強ウイルス—新型インフルエンザの恐怖
2008.5刊行。2008.1.12,13放送のNHKスペシャル番組をもとに、大幅加筆して書籍化。
執筆担当者は虫明英樹、斎藤真貴、和泉田映。虫明氏はSARSの「カルロ・ウルバニ」本の執筆者でもある。
番組は第1夜がドラマ仕立て、第2夜がドキュメンタリー仕立てになっていて、いずれも社会に大きなインパクトを与えた。この放送を受けて、2008年度から厚生労働省には「新型インフルエンザ対策委員会」が設けられたとも記されている。その委員会で、押谷仁先生が「失望しました」と不満をぶちまけたことも、本書には記されている。
インドネシアでの医師たちの動きを追った第1章はなかなかの迫力。
ただ、一冊の本として見ると、やはり薄い感じがしてしまう。海外ではドキュメンタリー制作者が骨太な科学ノンフィクションをつくりあげるのと比較すると、どうしても見劣りしてしまうことも確か。いっそ書籍化はプロのノンフィクション作家にじっくり任せたほうがいいのではないかとも思う。
また、H5N1に焦点が当たっているため、切迫感はあるが結果的に現実を写し切れていない構成になってしまっている。本を作る難しさである。それをフォローするため、巻末で田代眞人、喜田宏、押谷仁の各氏から新たにコメントを取り、掲載してバランスを取っている。
海外の動向は生々しく伝えられており興味深いが、これらが一般的な状況なのか、あるいは先進的な取り組みなのか、そのへんはちょっとわからなかった。
パンデミックのときは病院に患者が殺到するため、ひとりひとりの患者に最善を尽くすのを諦め、より多くの患者を診る態勢に切り替える、という看護師の言葉が興味深い。若い看護師は痛みを訴える個々人の患者に万全の治療を施したいと考えがちだが、パンデミック時にはそういった考えは切り替えないといけないとのこと。
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