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May 31, 2008

フタバスズキリュウ発掘物語—八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウ (DOJIN選書 14)


→朝日新聞2008.5.25「発掘から命名まで 38年のロマンが

「日本に化石ブームを起こし、映画『ドラえもん のび太の恐竜』のピー助としても知られるフタバスズキリュウ 発掘から骨格の復元、種の同定までの軌跡」
 と帯にあるのに、書評で述べたとおり、本文中では一回も『のび太の恐竜』へ言及はない。ドラえもんのおかげで日本では知らない子どもがいないフタバスズキリュウだが、これまではほとんど関連本がなかったので、これがようやく出た決定版解説書といえる。

『のび太の恐竜』への言及がないのは、書評でも述べておいたとおり、実際の研究結果が炙り出したフタバスズキリュウの生態が、藤子・F・不二雄先生の描いたピー助とはまったく違うものだから。
まずフタバスズキリュウは胎生の可能性が高く、卵では生まれていなかったかもしれない。だからのび太が卵を発見することはなさそうだ。またフタバスズキリュウは陸に上がれなかった可能性が高い。のび太の部屋で遊んだり、ましてや白亜紀のアメリカ大陸を横断したりなんてことは無理だろう。そもそも首長竜は恐竜のグループでさえない。つまり『のび太の恐竜』は、タイトルから何から完璧に間違っているというわけ。

それでも『のび太の恐竜』は傑作であり、多くの子供たちに恐竜へのロマンを与え、科学の発展に寄与した。藤子・F先生はむしろ『のび太の恐竜』をドラえもん版『野生のエルザ』として描いた。

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May 28, 2008

証人たち (シムノン本格小説選)

現在刊行されている多くの小説は、読者に呼吸を合わせる体裁を採っていると思う。読者が読んで心地よいように、読者の呼吸に合わせて作家が文章を書いている。
なぜいまシムノンが読まれなくなったのか。たぶんそれは、シムノンの小説が、読者ではなくシムノンの呼吸によって書かれているからだと思う。つまり読者の方がシムノンの呼吸に合わせなければならない。これはいまの時代、とても奇特なことであり、読者を慮っていないとして拒絶されがちなスタイルなのだと思う。しかしかつての多くの本は、読者の方が作者に呼吸を合わせていたのではなかったか? 
というわけで本書もいつも通りのシムノン。シムノンは1日1章書き、8章くらいで長篇1本を終えるというスタイルを貫いた。読み進めることで、私自身がシムノンという作家の日常生活に重ね合わさってゆく、そんな感覚。でもこういう読書体験が、年をとると好きになる。30歳を過ぎたらシムノンを読もう、とはよくいわれることだが、それってつまり、30歳を過ぎたら人は他人の呼吸に自分を合わせることで歓びを見出せるようになるのだ、といっているのだと思う。
いま「シムノン邦訳全作品を読もう」キャンペーンをひとりで実施中なのである。いくつか超レア作品があるのが困りもの。でも最近『死んだギャレ氏』を見つけてしまったので、なんとなくコンプリートできそうな雰囲気になってしまった。あとは『自由酒場』と『オランダの悲劇』くらいか?

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May 26, 2008

ユゴーの不思議な発明

朝日新聞の書評は奥付から2カ月を過ぎたものは原則として取り上げることができない。ちょっと油断するとすぐに2カ月経ってしまうし、後で読んでおもしろかったなあと思っても無理。しかも少ないスペースに20人近い書評委員で書くものだから、順番が回ってこないと結局紙面に取り上げることができなかった、ということもままある……てなことがだんだんわかってきた。
なので面白いと思ったけれど書評できなかった本は、こっちで言及していきたい。

本書はイラストと文章が混じり合った、ちょっと不思議な体裁の本。昔もこんなのがあったような気がする。イラストになっているのはむしろ物語上のタメの部分で、なんというか、パラパラマンガの技法というか、手塚治虫の『新宝島』の冒頭部分を読むのに近い感じ?
映画初期の時代を担ったあのメリエス自作の機械人形を巡る、少年少女の冒険物語……と書くとネタばらしになってしまうのだけれど、そういうキーワードに反応する人が読んでこそおもしろい本。文章はさほどうまいとは思わないが、ストーリーはけっこうおもしろくて、腕の立つ監督によって映画化されたらきっといい作品になるだろうと思わせる。
分厚いですがさくっと読めます。

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May 06, 2008

チックタック

→朝日新聞2008.5.4「どこまでも大まじめにばかばかしく

80年代ホラー映画『クリッター』なんかが大好きな人にはたまらないはずのおバカ超絶ホラー。カバーイラストもかわいい。
同じ作者の書評は一年以上空けるという不文律があるのだが、『オッド・トーマス』がいつまで経っても邦訳される気配がないので、しびれを切らした。

ところで、クーンツのテーマが「愛は勝つ」であるといったのは尾之上浩司さんだったと思う。そこに私がつけ加えて、クーンツの2大テーマは「愛は勝つ」「人生には目的がある」であると指摘、日本ではこの説が流布して、本書の風間賢二さんの訳者あとがきでも言及されている。
ただそればかりでは書評にならないので、新しいキーワードを今回はじめて提示してみた。

これでミステリー、SF、科学、ホラーと、ひととおり関心範囲の書評をお披露目したことになる。
本当は純文系の作品もやりたいのだけれど、なかなか競り落とせません。

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