知的な距離感
クロースアップ・マジックの第一人者である前田知洋が書いた本。人間の「距離感」がテーマで、〈境界知〉提唱者のひとりである私としては「なるほど、マジシャンがそのテーマで書くならきっとおもしろいに違いない!」と思ったのだけれど、まあふつうでした。実際にマジックをするときに感じたことなど、自分のエピソードは少ししか書かれていなくて、多くは一般論ですね。もっと自分のエピソードをたくさんいれてほしかったかな。
それでも、著者が以前レストランで「マジックはいかがですか」と各テーブルを回っていたとき、ひとつのテーブルが受けると他のテーブルからも声がかかるとか、初めて社交パーティに行って緊張した話などはおもしろかった。
ところで、「知ったことしか書かれていない」という批評をよく目にする。人がこういうことを思う時って、どういう心理状態なんだろう、といつも私は考える。
どんな本であっても。本当に知ったことしか書かれていないということはまずない(これは断言できる。子ども向けの科学の本などでも、すべてが知っているということは絶対にない)。知らないことも書かれているはずなのに、それは意識からオミットされて、知っているという感覚ばかりで満たされてしまう。自分の不満を何か客観めいた感想に落とし込もうとして、こうなるのだろうか。知らないことでも想像の範囲内だと思ってしまうのだろうか。たんに著者に負けを認めるのが厭なのか(笑)。ちょっとこのことは真剣に調べてみたい気がする。








































